
創業融資
2026.8.27
創業期の資金繰り計画の立て方:売上が増える月に資金が減る仕組みも解説
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所「ワタリエ会計事務所」です。売上や利益が伸びていても、入金と支払いの時期によっては、手元の資金が減ることがあります。特に売上が急に増える局面では、仕入や外注費の支払いが先に膨らみ、資金繰りがかえって厳しくなることもあります。この記事では、その仕組みと、事前に資金の動きを見通すための考え方を、シンプルな数値例とグラフでまとめます。これから創業する方や創業して間もない方を主な対象にしていますが、受注の増加を見込む会社にも共通する内容です。
- この記事のポイント
- 利益が出る計画でも、資金残高が増えるとは限らない
- シミュレーション:売上が倍になる月に、資金はいちばん減る
- パターンA:入金も支払いもズレがない場合
- パターンB:入金だけが翌月末になる場合
- パターンC:仕入の支払いが先行し、入金は翌月末になる場合
- 入金がさらに遅れたら:資金ショートと黒字倒産が起きる仕組み
- 資金繰り計画の立て方:利益の見込みに入金日と支払日を反映する
- 1. 月別の売上と費用の見込みを置く
- 2. 入金日と支払日を反映する
- 3. 残高が最も低くなる時期と金額を確認する
- 月末残高だけでは見えない、月の中の資金の底
- 受注が増える見込みがあるなら、資金の手当てを早めに考える
- ワタリエ会計事務所の資金繰りサポート
- まとめ
- よくある質問
- 黒字なのに資金が減っていくのはなぜですか?
- 資金繰り表には、どの入金と支払いを入れればいいですか?
- 資金繰り表はいつから作ればいいですか?
- 売上が増えそうなとき、融資の相談はいつすればいいですか?
- 関連記事
- ご相談はワタリエ会計事務所へ
この記事のポイント
損益上は利益が出ていても、入金と支払いの時期によって手元資金が減ることがある
掛け取引では、仕入代金などの支払いから売上の入金まで1〜2か月あくことがあり、売上が増える局面ほど先行する支払いも増える
資金繰り計画は、利益の見込みに入金日と支払日を反映し、資金残高の推移を確認するもの
受注が増える見込みがあるなら、融資を含む資金の手当ては、実際の支払いが増える前から検討する
月末残高だけでなく、月の中の最低残高も把握する。入金が月末に集中する会社では、月末の入金直前に残高が最も低くなることがある
利益が出る計画でも、資金残高が増えるとは限らない
月別の利益の見込みだけでは、資金残高の動きまでは分かりません。まずは単純な数値例で確認します。
月商350万円、材料や外注などの仕入が売上の60%で210万円(粗利率40%)、固定費が給与60万円・家賃20万円・その他40万円の合計120万円。毎月20万円の利益を見込む、損益分岐点を少し超えた状態です。そして3か月目に大口の受注が決まり、4か月目から月商が700万円に倍増するとします。
項目(万円/月) | 1〜3か月目 | 4か月目以降 |
|---|---|---|
売上 | 350 | 700 |
仕入(売上の60%) | 210 | 420 |
給与 | 60 | 60 |
家賃 | 20 | 20 |
その他の固定費 | 40 | 40 |
利益 | +20 | +160 |

この損益計画では、4か月目以降、毎月160万円の利益を見込んでいます。一方で、売上や費用を計上する時期と、代金を入金・支払う時期は必ずしも一致しません。資金繰りを確認するには、利益の見込みに加えて、入金日と支払日を反映した資金残高の推移を見る必要があります。
この期間を表す言葉が、入金サイトと支払サイトです。入金サイトは、商品やサービスを納品・請求してから代金が入金されるまでの期間です。支払サイトは、仕入や外注費が発生してから実際に支払うまでの期間を指します。掛け取引では「月末締め・翌月末入金」のように、売上の計上から入金まで1〜2か月あくことがあります。案件ごとの取引額が数百万円規模になることもある建設業や製造業では、このズレが資金に与える影響も大きくなります。
シミュレーション:売上が倍になる月に、資金はいちばん減る
この売上・費用の前提を使い、入金と支払いのタイミングが違う3つのパターンで、月末の資金残高を比べます。開業直後の立ち上がり期ではなく、月商350万円でしばらく事業がまわり、入金と支払いの流れが落ち着いた状態を1か月目とします。手元資金は300万円で、減価償却や借入金の返済、税金の支払いは省いたシンプルなモデルです。

パターンA:入金も支払いもズレがない場合
売上と同時に入金があり、仕入も同じ月に支払う、現金商売のイメージです。残高は320万円、340万円、360万円と少しずつ増え、売上が倍になる4か月目からは520万円、680万円、840万円と増え方が加速します。入金と支払いを売上・費用と同じ月に置いているため、資金残高も利益の増加に沿って、きれいな右肩上がりになります。
パターンB:入金だけが翌月末になる場合
仕入と固定費は当月払いのまま、売上の入金だけが翌月末になるパターンです。1〜3か月目の残高はパターンAと同じですが、売上が700万円に増える4か月目から差が生じます。4か月目の入金は倍増前の売上に対応する350万円のままですが、支払いは仕入420万円と固定費120万円の合計540万円です。この月に残高が190万円減り、170万円となります。5か月目には700万円の売上入金が始まり、残高は回復に向かいます。
支払いと入金のズレが1か月の場合、残高が大きく下がるのは4か月目の一度です。ただ、この月に予定外の支払いが重なると、資金の余裕はさらに薄くなります。
パターンC:仕入の支払いが先行し、入金は翌月末になる場合
次は、4か月目の売上に必要な仕入代金を3か月目末に支払い、その売上代金は5か月目末に入金されるケースです。支払いから入金まで2か月あく想定です。実際の期間は、各社の締め日、支払日、検収の時期などによって異なります。
3か月目には、4か月目の売上に対応する仕入420万円の支払いが先に来ます。350万円の入金に対して、仕入420万円と固定費120万円を支払うため、残高は340万円から150万円に下がります。4か月目も、5か月目の売上に対応する仕入420万円と固定費120万円を支払う一方、入金は350万円のままです。残高はさらに190万円減り、4か月目末には▲40万円となります。手元資金だけでは、予定していた仕入代金などの支払いを賄えません。
一方で、4か月目までに計上される利益は累計220万円です。利益が出ているかどうかだけでは、この資金不足を読み取れないことが分かります。
3つのパターンの月末残高を並べると、次のとおりです。売上と費用の前提は同じでも、入金日と支払日の違いによって、資金残高にはこれだけの差が生じます。
月末残高(万円) | 開始 | 1か月目 | 2か月目 | 3か月目 | 4か月目 | 5か月目 | 6か月目 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
パターンA | 300 | 320 | 340 | 360 | 520 | 680 | 840 |
パターンB | 300 | 320 | 340 | 360 | 170 | 330 | 490 |
パターンC | 300 | 320 | 340 | 150 | ▲40 | 120 | 280 |
入金がさらに遅れたら:資金ショートと黒字倒産が起きる仕組み
黒字倒産とは、損益計算書のうえでは利益が出ていても、支払いに必要な資金を用意できず、事業を続けられなくなることです。実際には、残高が不足した時点ですぐに倒産するわけではありません。追加の借入れを検討する、支払いを待ってもらう、入金を早めてもらうといった対応を重ねても、期日までに必要な資金を確保できなければ、事業の継続が難しくなります。パターンCは、利益が出ていても予定した支払いを賄えない状態を単純化して示したものです。
実際の商売では、ここに想定外の動きが重なることもあります。取引先の都合で入金が1か月延びる、検収が遅れて請求自体が翌月にずれる、といったケースです。売上が伸びている会社ほど先に支払う金額も大きくなるため、同じ1か月の遅れでも資金残高への影響が大きくなります。
利益の見込みだけでは、こうした資金不足を捉えにくいものです。月別の利益を見積もるときは、入金日と支払日を置いた資金繰りの予測も作り、どの時期に資金が不足しそうかを確認しておきます。
資金繰り計画の立て方:利益の見込みに入金日と支払日を反映する
資金繰り計画は、まず主要な入出金を入れた簡易な表から作れます。次の3つの手順で整理します。
1. 月別の売上と費用の見込みを置く
月ごとの売上、仕入などの変動費、給与や家賃などの固定費を並べ、利益の見込みを作ります。創業前であれば創業計画に置いた数字を、開業後であれば直近の実績と今後の受注見込みをもとにします。
2. 入金日と支払日を反映する
売上がいつ入金されるか、仕入や外注費をいつ支払うかを取引条件から確認し、月ごとの入金、支払い、月末残高を並べます。これが資金繰り表です。日本政策金融公庫のサイトにも資金繰り表の書式と記入例が公開されているため、簡易な表を作る際の参考にできます。
3. 残高が最も低くなる時期と金額を確認する
残高が最も低くなる時期と金額を把握することで、支払条件や受注量の調整、資金調達などを、いつまでに検討する必要があるかを整理しやすくなります。
仕入代金や人件費、家賃など、事業を続けるための日常的な支払いに充てる資金を、運転資金といいます。資金繰り表では、売上の入金までに、どの支払いが、いつ、いくら先行するかと、その間の支払いを手元資金で賄えるかを確認します。残高が大きく減る見込みがあれば、取引条件や受注量の調整、融資を含む資金調達などを検討します。
月末残高だけでは見えない、月の中の資金の底
ここまで見てきた資金繰り表は、月末残高を基準にしています。ただ、月末の残高がその月の最低額とは限りません。特に掛けの入金が月末に集中する会社では、月末は入金後で残高が多く、入金直前に残高が最も低くなることがあります。
先ほどのモデルで見てみます。固定費120万円の内訳は、給与60万円(20日払い)、家賃20万円(25日払い)、その他の経費40万円(カード払いで15日引落し)としていました。掛けの入金は月末、仕入の支払いも月末の振込です。ただし、総合振込でまとめて支払う場合、資金が口座から出るのは前営業日か当日の早朝になることが多いものです。そこでここでは、月末の入金が入る前に仕入の支払いを行う場合を想定します。28日に資金が出るものとして、月初の残高を350万円とすると、残高は次のように動きます。
日付 | お金の動き | 残高(万円) |
|---|---|---|
月初 | ― | 350 |
15日 | 経費カード払い ▲40 | 310 |
20日 | 給与 ▲60 | 250 |
25日 | 家賃 ▲20 | 230 |
28日 | 仕入の総合振込 ▲210 | 20 |
月末 | 売上入金 +350 | 370 |

この月の月末残高は370万円ですが、月末の入金前には20万円まで下がります。想定外の支払いがひとつ重なるだけで足りなくなる水準です。実際に資金が厳しい場面では、総合振込を使わずに、入金を確認してから個別に振り込むといった運用でしのぐこともありますが、そうした綱渡りを続けるのは大きな負担になります。
日単位で残高を追う表は日繰り表と呼ばれ、資金が厳しい時期には、ここまで細かく残高を追う必要が出てきます。ただ、本来大事なのは、日繰りを気にしなくても済むだけの資金水準を、計画の段階で確保しておくことです。月別の残高推移と合わせて、月の中で資金がいちばん薄くなるのがどこかも押さえておくと、資金計画の精度が上がります。
受注が増える見込みがあるなら、資金の手当てを早めに考える
売上が増える局面では、仕入代金などの先行支払いも増え、一時的に資金残高が大きく下がります。この、売上の増加に伴って追加で必要になる資金を増加運転資金と呼びます。パターンCで3〜4か月目に残高が合計380万円減る動きは、増加運転資金が必要になる場面を単純化したものです。受注増に伴う仕入や外注費との関係を示せるため、なぜ資金が必要なのかを金融機関に説明しやすい資金でもあります。
残高が大きく下がる時期が見えたとき、受注量を調整して支払いを抑えるのも選択肢です。ただ、受注できる体制があり、採算も見込めるのであれば、資金だけを理由に機会を見送るのはもったいないこともあります。受注の見込みが立った時点で融資の相談を始めれば、資金調達を含めて対応を検討する時間が取れます。融資は、資料の準備から審査、実行まで一定の時間を要するため、支払いが迫ってからの相談では希望する時期に間に合わないことがあります。
日頃の準備としては、主に2つあります。ひとつは、月次決算を早期化し、直近の試算表を提出できる状態にしておくこと。もうひとつは、今後の受注や売上の見込みと、それに伴う仕入や外注費の支払いを説明できるように整理しておくことです。
地元の金融機関の方との会話でも、資金が必要になってから試算表の準備に入るケースは少なくないと伺います。普段から試算表や業況を共有しておけば、資金が必要になった際に会社の状況を一から説明する負担が減り、相談を進めやすくなります。それだけで融資の可否が決まるわけではありませんが、相談を円滑に進めるための準備にはなります。
ワタリエ会計事務所の資金繰りサポート
資金繰りの見通しを持つには、足元の数字と今後の計画をつなげて見る必要があります。ワタリエ会計事務所では、日々の経理をfreeeでタイムリーに把握できる仕組みを整え、月次決算の早期化を図り、直近の試算表を確認できる状態を整えます。そのうえで、受注や売上の見込みを伺いながら月別の残高推移を作り、残高が薄くなる時期がありそうなら、増加運転資金の検討や金融機関への相談の進め方を一緒に考えます。
この記事のモデルでは省きましたが、実際には設備投資や税金の支払いなど、資金繰りで考える要素はほかにもあります。入金や支払いのスケジュールは会社ごとに異なり、業種による特徴もあります。そうした会社ごとの入出金の特徴も踏まえて、月別の資金見通しを整理します。
資金の見通しをクリアにし、受注や目の前の仕事に力を注ぐための土台づくりをお手伝いしています。
創業前の計画づくりをしている方からのご相談はもちろん、開業してから資金繰りが気になり始めた方、資金の見通しが読めず不安を抱えている方のご相談も承っています。
まとめ
損益上は利益が出ていても、入金と支払いの時期によって手元資金が減ることがある
売上が増える局面では、仕入や外注費の支払いが先に増える。支払いから入金までの期間が長いほど、必要な手元資金も大きくなる
資金繰り計画は、利益の見込みに入金日と支払日を反映し、月ごとの資金残高を予測するもの
月末残高だけでなく、月の中の最低残高も確認する。日繰りを気にしなくても済む資金水準を、計画の段階で確保しておく
受注が増える見込みがあるなら、支払いが増える前に資金の手当てを検討する。月次決算の早期化と金融機関への日頃の情報共有は、相談を円滑に進めるための準備になる
よくある質問
黒字なのに資金が減っていくのはなぜですか?
売上や費用を計上する時期と、実際に入金・支払いが行われる時期が一致しないためです。特に掛け取引では、仕入や外注費の支払いが売上の入金より先に来ることがあります。売上が増えるほど先行する支払いも増えるため、利益が出ていても資金残高が減ることがあります。
資金繰り表には、どの入金と支払いを入れればいいですか?
まずは、売上の入金、仕入・外注費、給与、家賃など、毎月の主な入出金を入れます。そのほか、借入金の入金と返済、税金、設備投資、賞与、一時的な支払いも資金残高に影響するため、予定が分かるものは反映します。それぞれの入出金が、いつの売上や費用に対応するものかを整理すると、損益と資金の関係も確認しやすくなります。
資金繰り表はいつから作ればいいですか?
創業前の計画段階から、月別の見込みを作っておくとよいでしょう。事業を始めた後は実績で更新し、当初の計画との差を確認します。売上金額、入金日、仕入や外注費の支払時期など、どこで差が生じたかを見直すことで、次の資金予測に反映できます。
すでに事業を始めていて資金繰り表を作っていない場合は、まず毎月の入金と支払いを並べ、それぞれがいつの売上や費用に対応するのかを整理するところから始めます。資金が厳しい時期には、月別の表に加えて日繰りでも残高を確認します。
売上が増えそうなとき、融資の相談はいつすればいいですか?
受注の見込みと入金・支払いの条件が具体的になった時点で、資金が実際に減り始める前に相談するのが目安です。融資は、資料の準備から審査、実行まで一定の時間を要します。直近の試算表に加え、受注や売上の見込みと、それに伴う支払いを説明できるよう整理しておくと、相談を進めやすくなります。
関連記事
ご相談はワタリエ会計事務所へ
ワタリエ会計事務所では、freeeを活用した月次決算の早期化から、月別の資金見通しの整理、必要に応じた金融機関への相談準備まで、税務顧問の中で一緒に進めています。
開業後の経理・税務と資金繰りを継続して相談したい方は、税務顧問サービスの詳細をご覧ください。
創業前で、創業計画や融資申込みの準備から相談したい方は、創業融資サポートの詳細をご覧ください。
この記事を書いた人
ワタリエ会計事務所 公認会計士・税理士 五反田 航
埼玉県ふじみ野市を拠点に、創業前の資金計画づくりから創業後の資金繰りまで、freeeを活用したサポートをしています。川越市・富士見市・三芳町・志木市・朝霞市・新座市などを中心に、オンラインで全国からのご相談にも対応しています。
本記事は2026年8月時点の情報に基づきます。税制・許認可・融資の最新情報は、国税庁・日本政策金融公庫・所管省庁等の公式サイトでご確認ください。








