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2026.8.7

法人設立1期目の消費税はどうなる?免税の条件とインボイス登録の判断

川越・ふじみ野エリアの税理士事務所「ワタリエ会計事務所」です。

会社を設立した方から、「1期目は消費税を納めなくていいと聞いたけれど、本当?」「取引先からインボイスの登録番号を聞かれたけれど、登録すべき?」というご質問をよくいただきます。

資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立2期目までは原則として消費税の免税事業者です。ただ、インボイス制度が始まってからは、取引先との関係などを考慮して、設立当初からインボイス登録(インボイスを発行するための税務署への登録)をする会社も増えました。登録すると、1期目から消費税の申告と納税が必要になります。

この記事では、1期目の消費税がどうなるかの基本ルールと、インボイス登録を判断するときの考え方を整理します。

この記事のポイント

  • 資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として1期目・2期目は消費税の免税事業者

  • ただしインボイス登録をすると、その時点から課税事業者として申告・納税が必要になる

  • 登録するかどうかは、売上先がインボイスを必要とする事業者かどうかが大きな判断材料。1期目の終了までには結論を出す必要があるため、できれば設立前、遅くとも設立後の早い段階で検討して決める

消費税の仕組み:納めるのは消費者ではなく事業者

本題に入る前に、消費税の基本の仕組みを押さえておきましょう。

消費税は、商品やサービスの価格に上乗せされて、最終的に消費者が負担する税金です。ただし、消費者が一人ひとり税務署に納めるわけではありません。売上と一緒に消費税を受け取った事業者が、消費者の代わりにまとめて納める役割を担っています。

事業者は、売上のときにお客様から消費税を預かり、仕入れや経費の支払いのときに消費税を支払っています。納める消費税は、この差額です。

納める消費税 = 売上で預かった消費税 − 仕入れ・経費で支払った消費税

たとえば、売上が税込1,100万円(うち消費税100万円)、仕入れ・経費が税込660万円(うち消費税60万円)なら、納めるのは100万円 − 60万円 = 40万円です。

この「支払った消費税を差し引く」計算を仕入税額控除といいます。

なお、実際の申告では、支払った消費税を1件ずつ実額で集計する方法(原則課税)のほかに、みなしで計算できる制度もあります。納める消費税を売上で預かった消費税の2割にできる2割特例(先ほどの例なら20万円)や、業種ごとに決められた割合で支払った消費税を見積もる簡易課税です。

設立1期目は原則「免税事業者」からスタート

消費税を納める義務があるかどうかは、原則として基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。

新しく設立した会社には、この基準期間がそもそも存在しません。そのため、資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として設立1期目・2期目は消費税の申告・納税義務が免除されます。この状態の事業者を免税事業者といいます。

この免税は、創業期の資金繰りにとって大きなプラスです。消費税は利益ではなく売上をベースに計算される税金なので、赤字なら法人税は原則かからない(地方税の均等割程度で済む)のに対し、消費税は赤字でもまとまった納税額が発生することがあります。とくに人件費が中心の事業では、給与に消費税がかからない分だけ差し引ける消費税が少なく、赤字でも消費税の負担が重くなることがあります。免税事業者の間は、この負担がそもそも発生しません。

インボイス制度とは?「登録」と免税の関係

インボイス(適格請求書)とは、税務署から与えられた「登録番号」など、決められた項目が記載された請求書や領収書のことです。2023年10月に始まったインボイス制度により、買い手が仕入税額控除(先ほどの「支払った消費税を差し引く」計算)をするには、原則として売り手が発行したインボイスの保存が必要になりました。

ポイントは、インボイスを発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」だけだということです。この記事で「インボイス登録」と呼んでいるのは、この適格請求書発行事業者になるための税務署への登録を指します。そして、この登録をすると、本来は免税でいられる事業者も課税事業者になります。整理すると、次の関係になります。

  • 登録する:インボイスを発行できる。ただし免税をやめることになり、消費税の申告・納税が必要になる

  • 登録しない:免税のままでいられる。ただしインボイスを発行できないため、取引先が仕入税額控除をできず、取引先の納税額が増えることがある

免税のメリットとインボイスの発行は、両立しない関係にあります。

1期目から(または2期目から)課税事業者になるケース

ここまで「原則は免税」と説明してきましたが、次のような場合は免税になりません。

  • 資本金1,000万円以上で設立した場合:基準期間がなくても、1期目から課税事業者になります

  • インボイス登録をした場合:課税事業者として申告・納税が必要になります

  • 特定期間の判定に引っかかった場合:1期目開始から6ヶ月間の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になります

  • 大きな会社の子会社として設立した場合:株式などの50%超を保有する親会社やそのグループ会社の課税売上高が5億円を超える場合など、免税の適用がないことがあります

資本金1,000万円未満であれば必ず2期免税、というわけではありません。

インボイス登録するかどうかの判断軸

まず大きな判断材料になるのが、自社の売上先が「誰か」です。

  • 売上先が課税事業者の法人中心(BtoB):取引先は仕入税額控除のためにインボイスを求めることが多いです。登録しないと取引先の負担が増える可能性があるため、取引先との関係を考慮して登録する方も多いです

  • 売上先が一般消費者や免税事業者中心(BtoC):相手はインボイスを必要としないため、免税のメリットを活かして登録しない判断が基本になります

なお、免税事業者からの仕入れでも、取引先は経過措置により消費税相当額の一定割合を控除できます。ただしこの割合は今後段階的に縮小していく予定で、時間が経つにつれて、取引先から登録を求められる場面は増えていくと考えられます。

このほか、1期目に店舗の内装や機械などの多額の設備投資を予定している場合は、支払う消費税が売上で預かる消費税を上回り、あえて課税事業者になることで差額の還付を受けられる可能性があります。ただし、還付を受けられるのは原則課税で申告する場合だけで、2割特例や簡易課税では還付は受けられません。翌期以降の納税額への影響もあわせた試算が必要になるため、該当しそうな場合は登録前に税理士に相談することをおすすめします。

登録するなら知っておきたい「2割特例」

免税を選択できる事業者があえてインボイス登録をして課税事業者になった場合、納付する消費税額を「売上にかかる消費税の2割」にできる特例があります。事前の届出は不要です。仕入れの消費税を集計する手間がなく、納税額の負担も少なくなるケースが多いため、創業期には使いやすい制度です。

ただし終了時期が定められており、法人が適用できるのは令和8年(2026年)9月30日までの日を含む課税期間までです。設立のタイミングと決算月によって適用できるかどうかが変わるので、設立前に確認しておきたいところです。

なお、個人事業主には、令和9年分・令和10年分の申告で納付税額を「売上にかかる消費税の3割」にできる3割特例が新設されています(法人は対象外)。

新しく設立した法人の登録手続きと期限

インボイス登録は自動では行われないため、税務署への申請が必要です。新しく設立した法人は、申請書に「設立日から登録を受けたい」旨を記載して1期目の末日までに提出すれば、設立日にさかのぼって登録されます。申請書は「適格請求書発行事業者の登録申請書」の1枚で、現在は経過措置により、本来必要な課税事業者選択届出書は不要です。この経過措置は、令和11年(2029年)9月30日までの日を含む課税期間まで設けられています。提出はe-Taxまたは書面(管轄のインボイス登録センター宛の郵送)で行います。

登録するとインボイスを発行できるようになります。通常は請求書や領収書がインボイスにあたりますが、登録番号のほかにも、適用税率や税率ごとに区分した消費税額等など、記載事項が細かく定められています。要件を確認したうえで、記載事項を満たした書類を発行するようにしましょう。

消費税にも関わる設立時の判断:資本金・決算月・法人成り

資本金や決算月、法人成りのタイミングは、消費税の免税に関わる一方で、それ以外の要素もあわせて考えて決めるものです。ここでは消費税との関係を整理し、詳しい考え方はそれぞれの記事をご案内します。

  • 資本金:1,000万円未満であれば免税の前提を満たしますが、資本金は必要資金や信用力の面からも考える必要があります。考え方は資本金の決め方の記事で整理しています

  • 決算月:設立から2期目までが原則免税なので、免税期間を重視するなら1期目をできる限り長く取るように決算月を決めることになります。ただし決算月は事業の繁忙期や税理士選びなど、ほかの観点からも考える必要があります。詳しくは決算月の決め方の記事で整理しています

  • 法人成りのタイミング:個人事業主から法人成りする場合、インボイス登録は法人に引き継がれず、法人として改めて登録することになります。一方で、新しく設立した法人には免税期間が改めて生じるため、消費税の免税期間を延ばせる可能性があり、これも法人成りのタイミングを考える材料の1つです。考え方は個人事業主と法人の選び方・法人化タイミングの記事で整理しています

消費税は届出や選択のミスで納税額が大きく変わる税目

消費税は、判断や手続きのタイミングを一歩間違えると結果が大きく変わります。実際、次のようなつまずきは決して珍しくありません。

  • 2割特例が使えるのに、申告のときに適用を忘れた

  • 簡易課税を使うつもりが、選択届出書の提出期限を過ぎていた

  • 原則課税・簡易課税・2割特例のどれが有利かの試算が複雑で、判断を誤った

  • 簡易課税のみなし仕入率が、事業内容によって複数の事業区分にまたがり、集計が想像以上に煩雑だった

  • 2期目も免税のつもりでいたら、特定期間の判定(1期目開始から6ヶ月間の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円超)に該当していて、2期目から課税事業者になっていた

  • 多額の設備投資で消費税の還付を受けたあと、しばらく免税事業者に戻れず、簡易課税や2割特例も選べない縛りがあることを知らなかった

経過措置や特例が積み重なって、制度そのものがかなり複雑になっています。「知らなかった」「忘れていた」が数十万円、数百万円の差になることもあります。判断に迷う場合は、設立前・登録前の段階で税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

  • 資本金1,000万円未満で新しく設立した法人は、原則1期目・2期目は消費税の免税事業者

  • インボイス登録をすると、その時点から課税事業者。免税メリットとインボイス発行は両立しない

  • 登録するかどうかは、売上先がBtoB中心かBtoC中心かが大きな判断材料。迷う場合は、保留する余地があるかも含めて検討する

  • 登録する場合は、2割特例が使えるかどうかと、その終了時期まであわせて確認する

インボイス登録の判断は、1期目の終了までに必要です。設立前後の早い段階で、売上先の構成をもとに検討しておきましょう。

よくある質問

免税事業者のままだと、取引先に迷惑がかかりますか?

取引先が原則課税の課税事業者の場合、支払った消費税の一部を控除できなくなるため、取引先の負担が増えることがあります(経過措置により、当面は一定割合の控除が認められています)。取引先からインボイス登録についての確認が来て、それをきっかけに登録するケースも多いため、まずは主な取引先がインボイスを必要とする事業者かどうかを把握しておくことが大切です。

一度インボイス登録したら、免税事業者には戻れませんか?

すぐには戻れません。登録をやめる手続きはありますが、少なくとも2年程度は課税事業者のままでいることが求められます(免税に戻れる時期は、登録のタイミングによって変わります)。登録する前にきっちり検討しておきましょう。

売上が1,000万円を超えたら、消費税を納めることになりますか?

その事業年度からすぐに課税されるわけではありません。消費税は基準期間(前々事業年度)の課税売上高で判定するため、1,000万円を超えた事業年度の翌々事業年度から、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者になります。課税事業者になるタイミングでは、インボイス登録も忘れずに行いましょう。

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この記事を書いた人

ワタリエ会計事務所 公認会計士・税理士 五反田 航

川越・ふじみ野エリアの税理士事務所。会社設立前の消費税・インボイスの設計から、freeeを活用した経理の立ち上げまでサポートしています。

本記事は2026年8月時点の情報に基づきます。税制・許認可・融資の最新情報は、国税庁・日本政策金融公庫・所管省庁等の公式サイトでご確認ください。

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