
会社設立
2026.6.11
会社設立の資本金、いくらにする?事業計画から逆算して決める目安
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所「ワタリエ会計事務所」です。会社設立のご相談で迷いやすいのが、資本金をいくらにするかという点です。
資本金は1円でも設立できますが、あまりに小さい金額で始めると、法人口座の開設や取引開始の場面でハードルが上がったり、創業融資の検討で不利になったり、設立後すぐに運転資金が足りなくなるなど、あとから困る場面が出やすくなります。
一方で、適切な金額は事業の内容や資金計画によって変わります。本記事では、資本金を決める際に検討したいポイントを、実務の視点で整理します。
この記事のポイント
資本金は「設立後に必要な資金(固定費・運転資金)」から逆算して考える
少額すぎると、口座開設・取引開始・採用などで信用面のハードルが上がりやすい
創業融資を検討する場合、資本金は自己資金の見え方に影響する
税務面(消費税・均等割)の節目や、業種によっては許認可の財産要件があるため、設立前に確認しておきたい
資本金は後から変えられるが、増資・減資には手続きとコストがかかる
資本金とは何か
資本金は、会社を設立するときに株主が払い込み、登記簿に記載される金額です。会社の信用力や財務体力を示す数字として、銀行・取引先・行政機関など、さまざまな場面で参照されます。
2006年の会社法施行で最低資本金制度(株式会社1,000万円、有限会社300万円)が廃止され、いまは資本金1円から株式会社を設立できます。ただし「制度上1円でも作れる」ことと「1円で作っても問題ない」ことは別の話です。資本金は事業のスタートに使える元手そのものなので、設立後に必要となる資金から逆算して決めるのが基本になります。
資本金は「必要資金から逆算して」決める
資本金を決めるときの基本は、設立後にどれくらいのお金が必要になるかを見通すことです。
株式会社の設立には、登録免許税や定款認証の手数料などを合わせて、少なくとも16万円ほどかかります。さらに設立直後は、家賃・人件費・仕入れといった運転資金が、売上の入金前から出ていきます。ここを見通さずに「とりあえず1万円で」「ひとまず少額で」と設立してしまうと、すぐに資金が回らなくなって…というケースも実際に見聞きします。決算を迎えた時点で債務超過に陥ってしまうと、その後の融資審査で不利になり、立て直しが難しくなってしまうこともあります。
だからこそ、最初に必要資金をきちんと見積もって、それに見合った資本金を用意しておくことが大切です。ここが整っていると、設立後の資金繰りに余裕が生まれますし、創業融資を受ける際の説明もしやすくなります。
もうひとつ、登記簿に残る数字そのものの印象もあります。資本金は誰でも確認できる情報なので、取引先の与信、金融機関の口座開設、事務所の賃貸契約など、会社としての信用が問われる場面で繰り返し参照されます。
整理すると、資本金を考えるときに見ておきたいのは次の3つです。
設立直後にかかる費用(登記費用+しばらくの運転資金)
創業融資をどの程度活用する予定か
取引先や許認可からの要請があるか
この3つを見通したうえで、事業計画と一緒に決めていくのが基本です。「設立時点でそこまでの資本金を用意するのは難しいかも」という場合は、開業のタイミングを少し後ろにずらして資金を準備したり、まずは個人事業として始めて様子をみる、というのも現実的な選択肢のひとつです。もちろん、事業の内容によっては、タイミングを逃さないことのほうが大事な場面もあります。資金の準備を優先するか、スピードを優先するか、というところも含めて、事業計画とあわせて考えていきたいポイントです。
消費税の納税義務に関わる1,000万円のライン
資本金額を考えるうえで、税制の面から意識したいラインが1,000万円です。
資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として設立1期目・2期目は消費税が免税になります。
ただし、資本金1,000万円未満=必ず免税とは限りません。たとえば次のようなケースでは、免税にならない(または2期目が免税にならない)ことがあります。
取引先の要請などで、設立当初からインボイス発行事業者として登録する(登録すると課税事業者になります)
1期目の特定期間の売上や給与支払額などの条件により、2期目が免税にならない
消費税の扱いは例外や判定が絡むため、設立前に一度、税理士に確認しておくのが安心です。
資本金を1,000万円以上にして設立した場合は、新設法人であっても初年度から消費税の課税事業者となり、免税期間という選択肢自体がなくなります。
資本金額で変わる、その他の税負担
資本金額の境界線で変わる項目は、消費税以外にもいくつかあります。
法人住民税の均等割は、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人の場合、標準的な税率で年7万円です(県民税2万円+市民税5万円。埼玉県・ふじみ野市はこの標準税率です)。資本金が1,000万円を超えると年18万円に上がります。自治体によっては標準より高い税率を採用しているところもありますが、いずれにしても毎年固定で発生してくる数字なので、頭の片隅に置いておきたいところです。
さらに資本金が1億円を超える規模になると、法人税の軽減税率(年800万円以下の所得に対する15%の特例)、交際費の損金算入特例、少額減価償却資産の即時損金算入といった、いわゆる中小企業向けの税制優遇が使えなくなります。法人事業税についても外形標準課税の対象に切り替わります。
小規模法人で1億円超の資本金を設定するケースは多くありませんが、増資を重ねて成長していく場面では意識しておきたい境界線になります。
創業融資では「自己資金」として見られる
日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金がどれだけあるかが審査の重要なポイントになります。以前は明文で「自己資金要件」が設けられていた時期もありましたが、現在その要件は撤廃されています。とはいえ、実際の審査では、自己資金の額と、それをどうやって貯めてきたかという形成過程が引き続き重視されます。
法人で申し込む場合、資本金として払い込んだお金は、自己資金の代表的なものとして評価されます。資本金に入れていない代表者個人の預貯金も、事業に充てる予定のものであれば自己資金に含めて評価されますが、いずれも「どうやって貯めてきたか」を通帳で確認される点は共通です。そのうえで、登記された資本金が極端に少ないと、「この事業にどこまで本気で取り組むつもりなのだろう」という見え方になってしまうことがあります。
融資を活用して創業する予定なら、「個人の手元にいくら残し、いくらを資本金として会社に入れるか」という配分も含めて、創業計画の段階から考えておきたいところです。
業種によっては許認可の財産要件が資本金の目安になる
建設業や人材関連(有料職業紹介・労働者派遣)など、許可取得の要件として財産的な基礎(自己資本や資産の額)が定められている業種があります。たとえば一般建設業では、自己資本500万円以上が一つの基準です。設立したばかりでまだ決算を迎えていない法人は、資本金の額がそのまま判定の基礎になるため、こうした業種では実質的に資本金の下限として効いてきます。該当する業種で起業を予定している場合は、設立前に所管省庁の最新の要件を確認しておきたいところです。
資本金は後から変えられるが、手間とお金がかかる
資本金は設立後も変更できますが、増資・減資のいずれもそれなりの手続きと費用がかかります。
増資をする場合は、株主総会の決議、出資金の払込み、法務局への変更登記申請が必要です。登録免許税として増資額の0.7%(最低3万円)がかかり、司法書士に依頼すれば別途報酬も発生します。
「最初は控えめにしておいて、軌道に乗ったら増資すればいい」という発想自体は実務でもよく使われますが、その都度の手続きコストは決して小さくありません。取引先や金融機関から見たときも、頻繁に資本金が動く会社は安定感に欠ける印象を与えることがあります。
減資は手続きがさらに重く、株主総会の決議に加えて、官報公告と債権者への個別催告という債権者保護手続きが必要で、債権者が異議を述べられる期間を1か月以上確保しなければなりません(小規模法人で減資が選ばれる場面はそれほど多くありません)。
いずれにしても、後から動かそうとすると相応の手間とお金がかかります。だからこそ、設立前の段階で事業計画と擦り合わせながら、納得感のある金額を決めておくのがよいと思います。
結局、いくらにするのがよいか
ここまでの内容を踏まえて、私たちがご相談を受ける際にお伝えしている考え方を整理します。
大前提として、資本金は事業計画と必要資金から逆算して決めるものなので、「この金額なら正解」という定額があるわけではありません。そのうえで、一般的な水準としてよく挙がるのが100万円から300万円というレンジです。とくに「300万円」は、かつての最低資本金制度で有限会社の下限とされていた経緯もあり、このくらいあればそれなりの信用力があると見てもらいやすい、一つの感覚的な目安になっています。
もうひとつ意識しておきたいのが、1,000万円のラインです。1,000万円以上にすると、設立初年度から消費税の課税事業者となり、住民税の均等割も上がります。1,000万円を超えて設立してはいけないということではなく、このラインの手前と先で税負担の前提が変わることを、金額を決める前に押さえておきたいという趣旨です。
融資からの逆算も、金額を考えるうえでの一つの要素になります。日本政策金融公庫の創業融資では、融資額は自己資金の3倍程度が一つの水準と言われることが多く、必要資金の2〜3割ほどを自己資金で用意しておく組み立てが現実的です。たとえば事業に2,000万円必要で、その大半を融資でまかなう計画なのに自己資金がごくわずか、というのは計画として無理が出やすくなります。希望する融資額から逆算して自己資金の水準を考え、そのうちいくらを資本金として会社に入れるかを決めていくイメージです。
そのうえで、具体的な金額は次のような材料から考えていくことになります。
設立直後の運転資金(家賃・人件費・仕入れなどを最低半年〜1年分)
創業融資をどの程度活用する予定か(希望する融資額に見合う自己資金の水準)
取引先や業種から想定される信用面の要請
許認可の有無と要件額
これらを踏まえると、多くの小規模法人では「100万円から300万円を一つの目安に、融資や取引の計画によってはそれ以上も検討しつつ、1,000万円のラインを意識して決める」という考え方が現実的だと思います。「うちの場合はどうかな?」と思ったら、事業計画と一緒に整理してみるのがおすすめです。
まとめ
資本金は事業計画と必要資金から逆算して決めるのが基本。極端に少ないと信用面・融資面に影響が出る場面もある
一般的な水準としては100万円から300万円が一つの目安。1,000万円のラインを超えると消費税・均等割の前提が変わる(免税のメリットはインボイス登録の有無でも変わる)
公庫の創業融資では資本金が自己資金の代表的なものとして評価される。融資額は自己資金の3倍程度が一つの水準と言われるため、希望する融資額からの逆算も金額を決める材料になる
業種によっては許認可の財産要件(自己資本・基準資産)があり、設立直後は資本金の額で判定されるため、設立前に確認しておく
増資・減資はいずれも手続きと費用がかかるため、設立前の段階で納得感のある金額を決めておきたい
よくある質問
資本金は1円で会社を作っても問題ありませんか
制度上は可能ですが、実務的にはおすすめしにくいです。設立費用の支払いだけで純資産がほとんど残らず、登記簿の数字も小さくなるため、融資審査や取引先の与信、口座開設などで不利になる場面が出てきます。資金を準備してから設立するのか、いったん個人事業として始めるのか、事業のタイミングも含めて選択肢を整理してみるとよいと思います。
資本金と自己資金は同じものですか
資本金は、株主が会社に出資して登記された金額です。創業融資の文脈で言う自己資金には、資本金のほか、個人の預貯金や事業のために準備してきたお金が含まれます。資本金として払い込んだお金は、自己資金の代表的なものと捉えるとイメージしやすいかと思います。
インボイス登録すると、資本金1,000万円未満の免税メリットはなくなりますか
はい。インボイス発行事業者として登録した時点で消費税の課税事業者となるため、資本金額にかかわらず納税義務が生じます。BtoB中心の事業ではインボイス登録するケースが多く、結果として「資本金1,000万円未満による免税」のメリットを使えないこともあります。
後から資本金を増やすことはできますか
増資という手続きで増やせます。ただし株主総会の決議、登録免許税(増資額の0.7%、最低3万円)、登記申請といった手続きが必要で、司法書士に依頼すれば別途報酬もかかります。「後から変えればいい」と気軽に決めるのではなく、設立前の検討で納得感のある金額にしておくのが望ましいです。
合同会社でも資本金の考え方は同じですか
基本的には同じです。消費税の免税要件(1,000万円未満)も、創業融資で自己資金として評価される点も共通しています。設立費用は株式会社より抑えられますが、資本金の決め方の考え方そのものは変わりません。
関連記事
ご相談はワタリエ会計事務所へ
「自分の事業だと、資本金はいくらが現実的だろう?」と迷ったときは、ぜひ一度お話しさせてください。事業計画・融資・税制をまとめて見ながら、納得感のある金額を一緒に整理していきます。
創業融資を検討している方は、創業融資サポートのご案内もあわせてご覧ください。
この記事を書いた人
ワタリエ会計事務所 公認会計士・税理士 五反田 航
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所。freeeを活用しながら、会社設立や創業融資など創業期のサポートをしています。
本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。税制・許認可・融資の最新情報は、国税庁・日本政策金融公庫・所管省庁等の公式サイトでご確認ください。








