
会社設立
2026.7.8
株式会社と合同会社の違いは?費用・信用力・運営で比較して選ぶ
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所『ワタリエ会計事務所』です。会社をつくると決めたあと、最初の分かれ道が「株式会社にするか、合同会社にするか」です。株式会社と合同会社の違いは設立費用の話として語られがちですが、費用だけで決めてよいかというと、そうとも言い切れません。外部からの出資の予定、取引先との関係、設立後の手続きの手間など、事業の中身によって答えが変わるからです。
この記事では、設立費用・維持コスト・信用力・資金調達の4つの視点で両者を比較し、合同会社を選ぶ場合に定款で決めておきたい3つの論点(利益配分・意思決定・持分の承継)まで整理します。
この記事のポイント
設立の実費は合同会社が約6万円から、株式会社が約16万円から(いずれも登録免許税が最低額で収まる場合)。株主総会・決算公告・役員任期といった設立後の決まりごとも、合同会社にはほとんどありません
税金の扱いは両者で同じ。節税の観点ではどちらを選んでも差はありません
最大の違いは資金調達。外部からの出資や上場を見据えるなら株式会社一択です
合同会社は定款の自由度が高い分、利益配分・意思決定・持分の承継を最初に決めておかないと、後で困る場面があります
基本的な違いは「出資と経営の関係」
株式会社は、出資者(株主)と経営者(取締役)が分かれている仕組みです。一人でつくる場合は自分が株主兼取締役になりますが、制度としては「出資比率に応じて議決権を持つ株主が、経営者を選ぶ」という構造です。
合同会社は、出資者(「社員」と呼びます。従業員のことではありません)がそのまま経営を担います。利益の配分や意思決定のルールを定款でかなり自由に設計できるのが特徴です。
なお、よく誤解されますが、法人税や消費税など税金の扱いは両者で同じです。役員報酬や経費の考え方も変わりません。「節税のためにどちらが有利か」という観点では差がない、というのが出発点になります。
設立費用:実費は合同会社のほうが安く済む
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
定款用収入印紙 | 電子定款なら0円(紙は4万円) | 電子定款なら0円(紙は4万円) |
定款認証手数料(公証役場) | 1.5万〜5万円(資本金の額などによる) | 不要 |
登録免許税(法務局) | 資本金×0.7%、最低15万円 | 資本金×0.7%、最低6万円 |
実費合計の目安 | 約16万円から | 約6万円から |
合計の最低額は、登録免許税が最低額(株式会社15万円、合同会社6万円)で収まる場合のもので、資本金×0.7%がこれを超えると、その分だけ実費は増えます。また、定款認証の手数料も資本金の額などで変わり、資本金100万円未満で一定の要件を満たす会社では1.5万円に引き下げられています。
このほか、会社の実印などの準備で1万円前後かかります。合同会社は定款認証そのものが不要なため、費用だけでなく公証役場での手続きも省けます。
設立後の決まりごと:株主総会・決算公告・役員任期
設立後にかかる手間と費用にも、いくつか違いがあります。株式会社には会社法上の決まりごとがひととおりあり、所有と経営が一致している合同会社には、その多くがありません。
株主総会:株式会社は毎年の定時株主総会が必要で、一人会社でも議事録の作成といった手続きは残ります。合同会社には株主総会にあたる仕組みがありません
決算公告:株式会社には毎年の決算公告の義務があり、官報に掲載する場合は7万円前後の費用がかかります。合同会社には決算公告の義務がありません
役員任期:株式会社の取締役には任期があり(非公開会社で最長10年)、任期満了ごとに重任登記の手間と費用がかかります。合同会社には任期がなく、この手続き自体が発生しません
なお、合同会社にも「公告方法」を登記する必要はあります。小規模な会社では官報を選んでおくケースが多いです。
信用力・対外的な見え方
「合同会社は信用されないのでは」という質問はよく受けます。
正直なところ、信用力の差がどれほどあるかは、業界や取引先によるとしか言えません。日常の取引で会社形態を気にされる場面は多くありませんが、まったくないわけでもなく、取引先や採用の場面での見え方が気になる方は、判断材料の一つに入れておくとよいでしょう。
なお、「大手企業にも合同会社が増えているから安心」という説明を見かけますが、外資系企業の日本法人が合同会社を選ぶのは、主に本国側の税制上の取り扱いなど、信用力とは別の事情によるものです。とはいえ、合同会社という形態自体の認知が広がり、「合同会社だから信用できない」という空気が薄れてきているのは確かだと思います。
細かい点では、合同会社の代表者の肩書きは「代表社員」で、「代表取締役」とは名乗れません。銀行口座の名義も、株式会社の「カ)」に対して合同会社は「ド)」と表記されます。日常の細部でどう見えるかが気になる方は、一度イメージしておくとよい点です。
資金調達:外部からの出資を考えるなら株式会社一択
最も大きな違いがここです。
合同会社は株式を発行できないため、外部の投資家から出資を受けるという選択肢が事実上ありません。資金調達は自己資金と融資(借入)が基本になります。VCやエンジェル投資家からの調達、将来の上場(IPO)を視野に入れるなら、最初から株式会社を選んでください。
一方、融資については形態による差はほとんどありません。日本政策金融公庫の創業融資も自治体の制度融資も、合同会社で問題なく利用できます。「自己資金+融資で立ち上げ、身の丈で成長させていく」タイプの事業なら、合同会社で不都合が生じる場面は多くありません。
合同会社の定款設計:決めておきたい3つの論点
合同会社のメリットとしてよく挙げられるのが、定款で運営のルールを自由に設計できることです。ただ、定款に定めがない部分には会社法の原則がそのまま適用されるため、決めておかないと困りやすい論点が3つあります。利益配分、意思決定のルール、そして持分の承継です。順番に見ていきます。
利益配分
合同会社は利益の配分を定款で自由に決められますが、定めがなければ出資額の比率で配分されます。複数人で設立する場合、貢献度と出資額が一致しないことはよくあります。あとから話し合いで決めようとすると調整が難しくなりがちなので、最初に定款で決めておきたいところです。
意思決定のルール
定款に定めがなければ、社員全員が業務執行権を持ち、業務の決定は出資比率ではなく「社員の頭数の過半数」で行うのが会社法の原則です。2人で設立した場合、出資比率が6対4でも過半数は実質「全員一致」となり、意見が割れると会社が前に進めなくなるおそれがあります。誰が何を決められるのか、割れたときにどう決着させるのかまで、定款で設計しておきたいところです。
逆に、ここは定款で自由に作り込めるところでもあります。たとえば、出資は1対1、利益の配分も1対1のまま、意思決定の権限だけ一方に寄せる。定款で「業務執行社員」を定めて、経営の決定権を持つ人を絞る方法は、実務でも使われている設計です。株式会社でも種類株式などを使って近いことはできますが、設計や手続きの重さがまるで違います。
持分の承継
見落とされがちですが、実は最も重要な論点です。社員が亡くなった場合、定款に定めがないと、その持分は当然には相続されません。特に一人で設立した合同会社では、社員がいなくなって会社が解散に至るリスクがあります。定款に「相続人が持分を承継できる」という定めを置いておくだけで避けられる問題なので、設立時に必ず手当てしておきたい項目です。
こうした定めは設立後でも定款変更(原則として総社員の同意)で追加できますが、最初に設計しておくのがいちばん負担が少なく済みます。
合同会社から株式会社への変更はできる?
「組織変更」という手続きで変更できます。ただし、官報公告を含む債権者保護手続きが必要で、公告の期間だけで1か月以上かかるため、完了までは全体で2か月前後を見ておきたいところです。実費も、登録免許税(解散と設立で最低6万円)に官報公告の費用を合わせて、10万円前後からかかります。
制度として、あとから株式会社に変える道は用意されています。ただ、変更には上記の期間と費用がかかります。将来の見通しも含めて、合同会社にしたい積極的な理由が特にないのであれば、最初から株式会社を選んでおくほうが無難なケースも多いです。
判断の目安
ここまでの比較を、選び方の目線で整理し直します。
株式会社を選んでおきたいケース
将来、VCや投資家からの出資・上場を視野に入れている
取引先や採用の場面での見え方に不安が残り、その不安を消しておきたい
外部からの出資を考えているなら、株式会社を選ぶことになります。信用力については前述のとおり「業界や相手による」としか言えないのですが、だからこそ、不安が残るなら株式会社を選んでおくのが無難です。合同会社にしたい積極的な理由が特にない場合も、同じ考え方で株式会社を選んでおくほうが迷いが少ないかもしれません。
合同会社が候補になるケース
一人や夫婦・家族での法人で、外部からの出資の予定がない
設立費用や、株主総会・決算公告・重任登記といった設立後の決まりごとを軽くしたい
複数人で立ち上げ、出資比率とは別に利益配分や意思決定のルールを設計したい
外部出資の予定がない小さな法人であれば、どちらを選んでも事業に支障が出る場面は少ないはずです。そのうえで、費用や設立後の手続きを軽くしたいなら合同会社が向いていますし、複数人での立ち上げで運営ルールを自分たちに合わせたい場合にも定款の自由度が活きます。この場合は、前述の3つの論点を定款で決めておくことが前提です。
まとめ
設立の実費は合同会社が約6万円から、株式会社が約16万円から(登録免許税が最低額で収まる場合)。設立後の決まりごとも合同会社のほうが少ない
税金の扱いは同じ。差がつくのは資金調達・信用力・運営設計
外部出資や上場の構想があるなら株式会社一択。自己資金+融資型なら合同会社で不都合は少ない
一人・家族の法人ならどちらを選んでも支障は少ない。信用面の不安を消したいなら株式会社、費用と手続きの手間を抑えたいなら合同会社が目安
合同会社を選ぶなら、利益配分・意思決定・持分の承継を定款で最初に設計しておく
よくある質問
税金の取り扱いは株式会社と合同会社で違いますか?
基本的に同じです。法人税・消費税・住民税の仕組みは共通で、役員報酬の設計や経費の範囲も同様に適用されます。異なるのは登録免許税など設立手続きにかかる費用です。
合同会社でも法人口座の開設や創業融資はできますか?
どちらもできます。「合同会社だと口座が作れなかった」という話を耳にすることもありますが、近年は犯罪利用を防ぐ観点から、会社形態を問わず新設法人の口座開設審査そのものが厳しくなっています。審査の中心は事業の実態や内容をきちんと説明できるかどうかで、この点は株式会社でも変わりません。創業融資も、日本政策金融公庫・自治体の制度融資ともに合同会社で利用できます。
合同会社の代表者の肩書きは何になりますか?
「代表社員」です。名刺や書類で「代表取締役」と記載することはできません。社外への見え方が気になる場合は、この点も判断材料に含めてください。
まず合同会社で始めて、後から株式会社にするのはありですか?
組織変更の手続きで可能です。ただし債権者保護手続きなどで2か月前後の期間と、10万円前後からの実費がかかります。数年内に外部出資や上場を見据えているなら、最初から株式会社を選ぶほうが合理的です。
関連記事
ご相談はワタリエ会計事務所へ
私たちは川越・ふじみ野エリアの税理士事務所として、株式会社・合同会社どちらの設立もサポートしています。「自分の事業にはどちらが合っているか」という段階から、事業内容や将来の計画をうかがいながら一緒に整理します。
この記事を書いた人
ワタリエ会計事務所 公認会計士・税理士 五反田 航
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所。freeeを活用しながら、会社設立や創業融資など創業期のサポートをしています。
本記事は2026年7月時点の情報に基づきます。税制・許認可・融資の最新情報は、国税庁・日本政策金融公庫・所管省庁等の公式サイトでご確認ください。








