
創業融資
2026.6.12
公庫の創業融資、申込から着金までの流れと必要書類【2026年版】
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所『ワタリエ会計事務所』です。日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資について、申込から着金までの流れを一通り解説します。これから創業融資を検討している方が、スケジュール・必要書類・面談・自己資金の全体像をこの記事だけで把握できるようにまとめました。私たちの事務所も開業にあたって公庫の創業融資を利用しており、その経験もふまえてお伝えします。
この記事のポイント
公庫の創業融資は、創業期でも原則無担保・無保証人で利用できる、最初に検討したい資金調達の選択肢
申込から着金までの目安は1〜1.5ヶ月程度(時期や申込内容によってはそれ以上かかることも)。私たちの事務所の場合は39日でした
必須書類は「借入申込書」と「創業計画書」の2つ。裏付け資料を含めると、申込内容に応じてさまざまな書類が必要になる
面談では経歴・集客の見通し・資金の使い道・自己資金の出どころが中心に確認される
審査が公庫の中だけで完結するため、自治体の制度融資と比べてスピードが早い傾向がある
日本政策金融公庫の創業融資とは
公庫の創業融資とは、政府が100%出資する政策金融機関である日本政策金融公庫が、これから事業を始める方や事業を始めて間もない方に向けて行う融資のことです。代表的な制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」で、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象になります。個人事業主・法人のどちらでも利用できます。
民間の金融機関は、過去の決算書や取引実績をもとに審査をするのが基本です。創業したばかりでは見せられる実績がないため、どうしても融資のハードルが上がります。公庫はこうした「実績がまだない創業期」への融資を政策的な役割として担っているので、創業期の資金調達ではまず候補に挙がる存在だといえます。
いくら借りられる?金利・返済期間の目安
新規開業・スタートアップ支援資金の主な条件は次のとおりです。
融資限度額:7,200万円
資金使途:設備資金・運転資金のどちらにも利用可
返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は10年以内(いずれも据置期間5年以内)
金利:固定金利制が基本。基準利率のほか、条件を満たすと特別利率が適用される
担保・保証人:創業期(税務申告2期未満)の方は原則として無担保・無保証人
据置期間とは、元金の返済を猶予してもらう期間のことです。売上が安定するまでの初期のキャッシュフローを和らげる仕組みとして活用できます。
金利には優遇の仕組みがあり、女性の方、35歳未満・55歳以上の方などは特別利率の対象になります。属性や条件によって適用利率が変わるため、ご自身がどの利率に当てはまりそうかは、公庫の窓口や公式サイトで確認してみてください。
なお、限度額は7,200万円ですが、実際にいくら借りられるかは創業計画の内容と自己資金とのバランスで決まります。希望額の根拠を計画書で示せるかどうかが大事になってきます。
申込から着金までの流れとスケジュール
全体の流れは次のとおりです。
事前準備(創業計画書の作成・自己資金の整理・見積書の取得)
公庫窓口へ申込(書類提出)
担当者との面談(申込から1〜2週間程度が目安)
審査・融資決定
契約手続き
着金
私たちの事務所が実際に利用したときのスケジュールは、次のような流れでした。
タイミング | 内容 |
|---|---|
申込日 | 公庫の支店に書類を提出 |
5日後 | 面談日程の連絡 |
13日後 | 支店で面談(約30分)。同日中に融資決定の連絡 |
14〜20日後 | 契約書類のやり取り |
39日後 | 着金 |
申込から着金まで39日でした。希望していた実行日に合わせて着金を遅らせた事情があったので、急ぎであればもう少し短くなっていたと思います。一般的な目安は1〜1.5ヶ月程度ですが、時期や申込内容、追加資料の有無によってはそれ以上かかることもあります。資金が必要なタイミングから逆算して、余裕を持って動き始めましょう。
公庫のスピードの背景には、審査が公庫の中だけで完結するという仕組みがあります。自治体の制度融資のように複数の機関を順番に通す必要がないぶん、意思決定が早く進みやすい構造です。
必要書類一覧
必須の書類は「借入申込書」と「創業計画書」の2つです。ただ、実際には計画書の裏付けとなる資料をあわせて提出することが多く、必要な書類は申込内容によって変わります。一般的な例を整理します。
必須の書類
借入申込書
創業計画書
あわせて提出するとよいもの
創業計画書の別紙(資金繰り表・損益計画書・月別売上計画など)
設備資金の見積書(内装工事・機械設備・車両・パソコンなど、設備投資の内容がわかるもの)
通帳のコピーまたは取引履歴(自己資金の確認用)
資格や許認可に関する書類(該当する場合)
確定している売上の根拠となる書類(取引の取り決め文書など、ある場合)
面談時・面談後に求められることがあるもの
本人確認書類
賃貸借契約書(物件契約済みの場合)
住宅ローンなど既存の借入の残高がわかる資料
公共料金の支払いを確認できる資料
履歴事項全部証明書(法人の場合)
並べると多く見えますが、創業計画書を作りながらその裏付け資料を揃えていく流れで、ほとんどが自然に集まります。設備投資がある場合の見積書は発行に時間がかかることもあるため、早めに動いておくと資金計画も立てやすくなります。細かい書類は面談で求められてから出す形で問題ありません。
それから、創業前でもすでに見込まれている取引があれば、その裏付け書類はぜひ用意したいところです。「確定している売上がある」ことは、審査を進めるうえで有力な材料になります。
創業計画書はどこまで作り込む?
創業融資の審査の中心にあるのが創業計画書です。創業期は過去の決算実績がないため、公庫は創業計画書を通じて経営者の力量や事業の実現可能性を判断します。公庫の公式サイトからフォーマットと記入例をダウンロードできるので、まず眺めてみると全体像がつかめます。
一般的に押さえておきたいのは、次のような点です。
自分の経験・スキルと事業内容のつながり(なぜ自分がこの事業をできるのか)を示す
売上予測は「客数×単価×営業日数」のように、根拠を分解して積み上げる
経費は業界平均と比べて極端に低くなっていないかを確認する
集客方法は「SNSで発信する」で終わらせず、誰に・どの媒体で・何を届けるかまで具体的に書く
私たちの事務所で作成したときも、こうした点を考えることに時間をかけました。売上予測の積み上げ方も集客の方法も、審査のためというより、事業を始めるうえで考えておかなければいけないことです。先に整理しておいたぶん、面談でも説明に迷うことはありませんでした。
計画書を作り込む過程は、面談対策にとどまらず、開業後の判断基準づくりにもつながります。毎月の経費がどのくらいで、どのタイミングで黒字化する見通しなのか。計画と実績を比べることで事業の現在地が見えやすくなり、ズレに気づいたときの軌道修正も早くなります。
面談では何を聞かれる?
面談は申込をした支店で行われ、時間は30分〜1時間程度のことが多いようです。一般的に確認されるのは、次のような項目です。
経歴と創業の動機(これまでの経験と事業のつながり)
事業内容と売上見込みの根拠
資金の使い道(設備資金・運転資金の内訳)
自己資金の金額と、貯めてきた経緯
住宅ローンやカードローンなど、既存の借入状況
私たちの事務所のときも、経歴の確認、集客の見通し、資金の使い道、自己資金の出どころの確認が中心でした。提出済みの口座情報に加えて、ネットバンキングのアプリ画面で残高を確認される場面もありました(事前の電話で案内がありました)。
面談は、計画書を根掘り葉掘り追及される場というより、書面だけではわからない部分を補足する場です。計画書をしっかり準備していれば、面談はその確認が中心になります。事前準備が9割、と考えておくとよいと思います。
自己資金はどれくらい必要?
よく言われる目安として「融資希望額の3分の1程度」がありますが、これはあくまで目安です。金額そのものと同じくらい、「その自己資金をどう貯めてきたか」が見られていると感じます。コツコツ貯めてきた記録が通帳に残っていれば、それ自体が計画性の証明になります。
逆に、申込直前に大きな入金がある場合は、その出どころを説明できるようにしておく必要があります。目安に満たない金額で申し込む場合も、「なぜこの金額で足りるのか」「資金計画にどう織り込んでいるか」を説明できることが大切です。
なお、法人を設立して借りる場合は、資本金の設定と自己資金の関係も整理しておきたいところです。資本金の考え方は会社設立の資本金の決め方と目安で詳しく解説しています。
まとめ
公庫の創業融資は、実績のない創業期でも原則無担保・無保証人で利用できる制度
申込から着金までの目安は1〜1.5ヶ月。審査が公庫内で完結するためスピードが早い傾向
必須書類は借入申込書と創業計画書。裏付け資料は計画書づくりと並行して揃える
面談は書面の補足の場。事前準備が9割
自己資金は金額だけでなく「どう貯めたか」も見られる
よくある質問
申込から着金までどれくらいかかりますか?
1〜1.5ヶ月程度が目安です。私たちの事務所の場合、申込から面談まで13日、面談当日に融資決定、着金まで39日でした。ただし、時期や申込内容、追加資料の有無によってはそれ以上かかることもあるため、資金が必要な時期から逆算して、早めに動き始めることをおすすめします。
開業後でも創業融資は申し込めますか?
新規開業・スタートアップ支援資金は、事業開始後おおむね7年以内の方も対象です。開業前だけの制度ではないので、開業後に運転資金が必要になった場合にも検討できます。
自己資金が少なくても借りられますか?
一律の基準で機械的に判断されるわけではありませんが、自己資金は計画性を示す材料として重視されます。少なめの金額で申し込む場合は、資金計画に無理がないことと、その金額で足りる理由を説明できるよう準備しておきたいところです。
自治体の制度融資とはどちらがいいですか?
スピードと手続きのシンプルさでは公庫、利子補給による実質負担の軽さや地元金融機関との関係づくりでは制度融資に分があります。併用も可能なので、状況に応じて比較検討するのが現実的です。
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この記事を書いた人
ワタリエ会計事務所 公認会計士・税理士 五反田 航
川越・ふじみ野エリアの税理士事務所。創業融資のサポートを含め、freeeを活用した創業期の支援をしています。
本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。税制・許認可・融資の最新情報は、国税庁・日本政策金融公庫・所管省庁等の公式サイトでご確認ください。
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